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大学生やってます

昨日のお客さん、その9

昨日はサンフランシスコからのお客様、R子様がいらっしゃるところから、私の心意気はいつもとちょっと違ったのである。

 

R子様はサンフランシスコに飲食店を持っていて、私と大ママオーナーは一度サンフランシスコへ行った時、大変お世話になった。もちろんR子様のお店にも行き、美味しい数々の料理に腹をふくらませたり、日中は自家用車で市内を観光しに回った。私が大学1年の夏だった。

 

 

私は大ママオーナーの下で働かせてもらうことになってから、R子様に時々会う。足の手術をしに日本へ帰ってリハビリをしていた彼女は、1ヶ月おきくらいにお店にくるのだけれど、リハビリが終わった夏からサンフランシスコへ帰還、また最近になって日本に戻ってきたというので近々お会いできると聞いていたのです。それが、昨日。大ママオーナーの友人であるY口様が誕生日当日であるというのでご飯を食べてきたらしく、お寿司屋さんのお土産として太巻きをいただいた。誰にも分けず1人で食べた。8種類もの具がはいった美味しい太巻きにうっとりした本日である。

 

 

R子様はテキーラで有名な方で、その場にいたひと、店員もお客さんも関係なくテキーラを飲ませる。彼女のテキーラの飲み方はあっぱれ、ショットグラスに並々ついだテキーラにレモンを絞りに絞って、乾杯とともに一気にクイーッと飲み干す。人への勧め方もこれまたお見事で、「あらあなた、ちょっといらっしゃいな、一杯だけ、一杯だけ、こちらのこのお酒で乾杯してくださる?どうかしら?一杯どうでしょうか?はい、これね、持ってね、うふふ」と、にこにことお上品にショットを掲げてくるものだから、相手は戸惑いながらもそのペースに巻き込まれ、巻き込まれたと気づいたときには時すでにお寿司いや遅し、まんまとテキーラのループにはまっていくのである。ショットが終わると今度はロックグラスに氷、テキーラで水割りを作り、レモンを絞ってコップのふちにまんべんなくこすりつけて、入れる。R子様テキーラドリンクの仕上がりである。これを、自分用に自分で作り、そして相手のためにも作る。

 

 

R子様のオソロシイところは、誰がどのくらい飲んだかきちんと見ている、というところだ。その場にいて、テキーラドリンクを振舞われた者は、半分以上手付かずでいるが、そうしているとたとえおしゃべりの途中でも、「あらあなた、全然飲まれてないんじゃありませんこと?美味しくなかったかしら、あたしの作ったお酒は。あらそう?おいしい?よかったわ、どんどん飲んでね」と、水で薄まったドリンクへテキーラをドバドバ追加、レモンもきれいに入れてくれるものだから、もはや逃げ場がないのである。飲むことが、もはや逃げ場なのである。飲めば飲むほどR子様は喜び、作り、飲まなければ飲まないほど、酔えない状態でそこにいることができなく、R子様の手練手管で飲み干すこととなり、そしてまた新たに注がれることになるのだ。

 

 

そんなこんなだから、私はR子様がいらっしゃるときくと、これはちといつもより、気合いというべきか、心意気というべきか、覚悟というべきか、そのような心持ちを待たずして、数日前から体調を備えるのであった。

 

 

21時半頃来店したR子様とY口様はごきげんで、ボックスに突然の来店者がいたためにカウンターへ移動、憎まれ口をたたきあいながらも仲良くやりとりをしていて、Y口様のバースデー祝いということで、R子様とY口様、私とみかさんでテキーラショットをあおった。口の中がビリビリする感触がひさしぶりで、すばやくレモンを口に含む。ショットグラス並々のテキーラは口の中でじわじわと電流を流し、今日の体力の行く末を案じた。どうか安全で健全で心安らかに終われますように。