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大学生やってます

昨日のお客さん、その13

先週に引き続き、昨日もひまであった。なんなん?火曜は暇dayなのかしらん?なかびの水曜のためにはやく帰ったりするのでしょうか。とにもかくにもひまで、21時すぎにいきなり3人もきてくれたからよかったものの、あまりにお客さんがくる気配がなかったためボトル棚の掃除をしかけたところだった。

 

 

初めて会ったSBTさんは、ママさんにいわせると「イケメン」だという。サザンの歌をうたっていて、白い恋人や希望の星を熱唱しては、キーが高いなあと苦笑していた。モテるだろうな、このひと。イケメンかどうかは好みだけれど、女好きのする顔をしていらっしゃる。口説くそぶりも見せなければ、最後の方には「ねむい」といってまぶたが閉じかかっていた。一緒にいたARIさんは歌が大変うまく、顔に合わず(失礼)声も意外とハスキーで素敵、マイクなしで堂々と歌い上げる様はあっぱれで、そのうえ洋楽も軽々と読みあげるものだから、カウンターに座っていたWTKSさんは「うまいなあ」とひとりごちていた。

 

 

WTKSさんはたまに来る。そしてママさんの元カレだという。鼻が高く顔の小さいWTKSさんは「カッコいい」とよく言われるタイプであり、女の子たちはもちろん大ママオーナーからも人気を得ているひとである。淡々としていて、はじめはクールなひとだと思ってたんだけど、そうではないことに気づく。それはママさんへの恋情だ。前に付き合っていたというママさんとWTKSさんは、ママさんはその気がなくとも、WTKSさんのママさんへのおもいは強いことがよくわかるようになってきた。早いときには20時くらいにきて、23時半までずっといて、ママさんと一緒に帰れるまで待ち続けているのだ。その忍耐力。その我慢強さ。並大抵のものじゃない、と確信したのは、WTKSさんが2度もママさんを長時間待っていたときで、2度目に、確信した。1度目は、お店が終わってもうお客さんが他に誰もいなく、さあ帰るぞとなったときに、大ママオーナーもいて、あとだれか女の子がいて、私、ママさん、WTKSさんという5人の状態で、タクシーで帰るというところへママさんが「タクシー、(5人じゃ)乗れないから、あたしいいです」と言ったらすかさずWTKSさんが「いいよ、俺送っていくから」と言ったことである。そして2度目は、早い時間にお店に来て、ママさんと喋っていて、でも忙しくなって他の女の子と交代して、23時半に女の子が帰ったあとも、ずっとママさんを待ち、あげく私ともうひとりのお客さんを返して、2人でお店に残ったことである。なんて根気強さだろうか。2時間も3時間も、ひとりで1人の女を待ち続けられるなんて、それも、一緒に帰れるか確実ではないのに、「はやく帰ろう」などと一切声もかけず急かさず、ただそういうことに関しては黙り、淡々とママさんとお喋りしている。そりゃあ、お酒をずっと飲んでるとはいえ(焼酎をひたすらロックで飲むのである)、いつ帰れるかもわからないママさんを、じっと待つというのは、すごい。なにがすごいかって、その体力、耐力の持ち量であり、そして、わからない、なにがわからないかって、それは想いの強さなのか、ただの執着執念なのかが、わからないのである。

 

 

昨日はわりと早めに帰って、といっても終電前くらいだったと思うけれど、ひまだったからかママさんがずっと隣に座って喋っていた。私は「だれか特定のひとがすき」で来ているひとには、なるべくスルーするようにしている。私はその人の代わりにはならないし、なれないし、なりたくないからだ。WTKSさんはママさんが1番なんだろう。私はママさんのように振る舞おうとは思わないし、WTKSさんもべつにそれを望んでいない。ママさんがママさんであればいいんだと思う。私はそこへ介入しないし、WTKSさんも介入してほしくなさそうだから、付かず離れずの距離で、眺めているのがいい。誰かにとっての1番があるというのは、悪いことではないけれど、他の人にたいして壁を作る。きっとそう思うのは、そのひとにとっての1番が私じゃないからなんだろう。だから、客観的になれるから、そのひとの1番がよくみえる。1番は、1番であるために、1番である努力をし続けることが大事なんだなと思うし、2番目はどうがんばっても2番目で、3番目は3番目、4番目は4番目で、そこらへんの異動はあるんだろうけれど、でも1番以外はみんな一緒なんだと思う。