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大学生やってます

昨日のお客さん、その3

昨日、月曜はあまりに暇で、そらもう暇で、びっくりするくらい暇で、言い訳のない暇さで、腰が抜けるかと思うくらい暇ゆえに、暇疲れをしてしまい、終電の一本前の電車でさっさと帰ってきました。

 

 

雨も降ってたしね、月曜だしね、まあしょうがないとは思うんですけど、それにしてもひとの少なさはなんだ?帰りの電車はすいすい空いていて、押し潰されそうな人混みの窮屈さに眉をしかめることなく、強いていえばスマホの充電が切れたことにあーあとため息を漏らしただけで、最寄りにつき霧雨のなか寒さに身を縮こまらせ帰宅。

 

 

21時過ぎに4人1組が来たっきり、最後23時25分に1人お客さんが来ただけで、その日は終了。20時から23時過ぎまで、私はただひたすらバー内の掃除をしつつ、スマホを確認しつつ、たまにボックス席へ氷とミネラルと灰皿と炭酸を提供しに、時計の針とお店のドアを見ていた。あまりにも長い時間だった。

 

やることがなければ掃除、と、まずグラスを洗い、拭き、冷蔵庫の上を拭き、洗い場の汚れ取りにかかる。4隅に溜まるアカの、なんとおぞましいことか。排水口にこびりつくカビの、なんとおどろおどろしいことか。これが私の宿命か。いや違う、キッチンの宿命であり、私はなぜこんなことを…くう、お客さんがわんさか来てくれればこんなことも思いもしなくてよいものの…ハッ、いかんいかん、掃除嫌いと暇さゆえに、拭いても拭いても落ちないこの洗面台のねちっこいカビ汚れのように、つい私のねちっこい文句がもくもくと浮かんできてしまった。悔やんでやる。この汚らしいカビに、汚れに、来ないお客さんに、そんな気持ちにさせた今という現状に‼︎ああ、時は無常なり。1人でせっせとゴシゴシ洗う洗面台に映る自分の、なんと疲れ切った表情よ。聞こえてくる会話に面白さも見い出せなければ、鼻につく笑い声とて腹が立ってくる。はあ、眠いし、お腹すいてきたし、帰りたいな、もしくは素敵なお客さん入ってきたり、しないかな、MKさんとかさあ。

 

 

期待は裏切られ、とうとう23時を回ってしまった。ママさんに、「23時半に上がっていいわよ」と言われ、絶対に23時半きっかりに帰ってやると意味もなく意気込んで、片付けを始める。体が重い。ずっと立ってたり、やることがなくて大して動いていないとさすがにこたえる。眠い。だるい。えみさんが風邪気味で10分早く帰り、マキさん、まどかさん、じゅりさんも上がっていった。はて私はちゃんと23時半に終われるのだろうかと思いながら洗い物をしていると、23時半の5分前に、1人お客さんがきた。私はもうほぼ動かすことのできない表情筋を使い、それでも笑顔というには程遠い、口の端っこをあげただけで、絶望的な気分で、いらっしゃいませ、と、相手に届いたかわからないくらいの声を出すので精一杯だった。カバンや上着を預かりにいく気力もなかった。じゅりさんが承ってくれた。感謝である。カシューナッツのMMさんは先週もきて、なぜまたこの遅い時間に…と信じられない気持ちになる。みかさんが酔っ払いながらお酒を作り始めた。

 

 

23時半過ぎにお客さん4人が帰って、なぜこのタイミングで、とこれまた腹立たしくさえあったけれど、あまりの眠さと苛立ちで絶対に電車で帰ってやると野心を燃やし、エレベーターでお客さんをお見送りし、ちはるさんとおつかれ〜と言い合いながらお店に戻る。テーブルに置いてあるボトルやグラスに辟易しながらも、これを片付けないで帰るのはいかがなものかと、なんとか理性を振り絞り、バーまで持っていく。見送りにいったママさんが戻ってきて、上がっていいから、それと、ボトルは2本とったわよね、伝票には1本しかかいてなかったわ、と言われ、私は謝ったかハイと返事をしただけかは忘れてしまうほどの眠さとだるさと疲れを引きずって着替えをしにトイレへ入った。

 

ちはるさんはもう着替え終わっていて、おつかれ、こういう日に限って明日朝早いんだよね〜と笑いながら帰っていった。明日、つまり今日もシフトを入れたらしく、また会える喜びに、手をふって別れた。太陽のような笑顔は久しぶりにみても健全である。着替えていると、みかさんがトイレをしに入ってきた。「今日は早く帰れると思ったんだけどなあ〜」。はあ〜と、独り言のような、私に言っているような。「明日、朝、仕事なのよねえ、ごめん、何時からってかいてある?見えなくて」とスマホのスケジュールを確認すると、8時からとかいてあった。「目覚まし、いまのうちにかけておかなくちゃ…」大変だな、朝働いて、夜も遅くまで働いて。すごい。体力勝負だなと、目の前でまざまざと感じる。カシューナッツのMMさんはみかさんが呼ぶお客さんだけど、今日はどうやら違ったみたいで、私がきてほしいと思っているMKさんに連絡をしたようだけど、「最近、忙しいみたいで、土曜も仕事してるんだって」とみかさんが言っていた。残念。年内にもう一度会えるといいなと思いながら、顔がにやついてしまったのだけれど、酔っ払ったみかさんはそんな私に気がつかないままヘロヘロになっていた。今日は遠慮無しに帰らせていただきますとばかりに、終電に間に合うようにお店を出た。今日はたくさんいいひとがきて、楽しい時間が過ごせますように。