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大学生やってます

ゆれる人魚を観ましたよっと

人喰い人魚の姉妹は海から這い上がり、ワルシャワのナイトクラブになだれ込む。引き取ってくれたのは店の経営者と3人のバンドマン。「私を岸にあげて、あなたを食べることはない」と歌う冒頭は不気味でわくっとする。ストーリーの展開は早い。人間は異質である彼女たちの存在をあっさりと受け入れるからだ。ナイトクラブで披露する姉妹のダンスや歌は「感動した」と絶賛され、認められる。下半身が生身の魚である彼女たちを、美しいものとして扱うことによって混乱を省き、人間に恋をすることと人間を食することを馴染みやすくしている。バンドマンと組んで踊る姉妹は、そらもうはっちゃけててミュージカル映画らしく色彩豊かにめまぐるしく動いていた。ヴォーカルをつとめ上げる姉御のような女性が格好良くて、彼女の存在感がいいスパイス。姉妹を抱き寄せ乳を吸わせるシーンなんか、「リトル・マーメイド」のアースラのよう。アースラは悪役だけど彼女はそうじゃない。ブルーに光る衣装が似合っている。邪悪な光を纏った姉妹に引けをとらない。人間である前に魚である彼女たち姉妹は、自分たちが特別だと思っている。自分らを“シルバー”と“ゴールデン”だと名乗るほどだもの、程なくしてシルバーはバンドの中のひとりの青年に恋をする。彼も彼女にキスをする。だけどそこまで。結局は「魚にしか思えない」と言われシルバーは人間の足を手に入れる。足を手に入れても愛までは手に入れられなかった。血で染まる彼の身体はその後、人間の女の子と恋をする。

アンデルセンの「人魚姫」がモチーフになっているようですが、王子様であるバンドマンの彼はちゃんと勘違いもせずに目の前の人間の女に恋をした。人魚姫はちゃんと喋れる。声を出して彼を求めていた。尾ひれを捨てて足を痛めて血だらけになりながら、人間でも人魚でもないものになってしまった。光が差し込み泡になった彼女に、そっちの泡かい、とツッコミが浮かぶもふわふわと漂って終いには消える。姉妹は永遠に消えた。次はどこへ行くだろう?ポーランドの地に再び舞い戻ることはあるだろうか、海を超えて、恋をしに陸に上がることはあるだろうか。

 

 

ポーランド映画ゆれる人魚」鑑賞記

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