hellobonjour

大学生やってます

昨日のお客さん、その13

先週に引き続き、昨日もひまであった。なんなん?火曜は暇dayなのかしらん?なかびの水曜のためにはやく帰ったりするのでしょうか。とにもかくにもひまで、21時すぎにいきなり3人もきてくれたからよかったものの、あまりにお客さんがくる気配がなかったためボトル棚の掃除をしかけたところだった。

 

 

初めて会ったSBTさんは、ママさんにいわせると「イケメン」だという。サザンの歌をうたっていて、白い恋人や希望の星を熱唱しては、キーが高いなあと苦笑していた。モテるだろうな、このひと。イケメンかどうかは好みだけれど、女好きのする顔をしていらっしゃる。口説くそぶりも見せなければ、最後の方には「ねむい」といってまぶたが閉じかかっていた。一緒にいたARIさんは歌が大変うまく、顔に合わず(失礼)声も意外とハスキーで素敵、マイクなしで堂々と歌い上げる様はあっぱれで、そのうえ洋楽も軽々と読みあげるものだから、カウンターに座っていたWTKSさんは「うまいなあ」とひとりごちていた。

 

 

WTKSさんはたまに来る。そしてママさんの元カレだという。鼻が高く顔の小さいWTKSさんは「カッコいい」とよく言われるタイプであり、女の子たちはもちろん大ママオーナーからも人気を得ているひとである。淡々としていて、はじめはクールなひとだと思ってたんだけど、そうではないことに気づく。それはママさんへの恋情だ。前に付き合っていたというママさんとWTKSさんは、ママさんはその気がなくとも、WTKSさんのママさんへのおもいは強いことがよくわかるようになってきた。早いときには20時くらいにきて、23時半までずっといて、ママさんと一緒に帰れるまで待ち続けているのだ。その忍耐力。その我慢強さ。並大抵のものじゃない、と確信したのは、WTKSさんが2度もママさんを長時間待っていたときで、2度目に、確信した。1度目は、お店が終わってもうお客さんが他に誰もいなく、さあ帰るぞとなったときに、大ママオーナーもいて、あとだれか女の子がいて、私、ママさん、WTKSさんという5人の状態で、タクシーで帰るというところへママさんが「タクシー、(5人じゃ)乗れないから、あたしいいです」と言ったらすかさずWTKSさんが「いいよ、俺送っていくから」と言ったことである。そして2度目は、早い時間にお店に来て、ママさんと喋っていて、でも忙しくなって他の女の子と交代して、23時半に女の子が帰ったあとも、ずっとママさんを待ち、あげく私ともうひとりのお客さんを返して、2人でお店に残ったことである。なんて根気強さだろうか。2時間も3時間も、ひとりで1人の女を待ち続けられるなんて、それも、一緒に帰れるか確実ではないのに、「はやく帰ろう」などと一切声もかけず急かさず、ただそういうことに関しては黙り、淡々とママさんとお喋りしている。そりゃあ、お酒をずっと飲んでるとはいえ(焼酎をひたすらロックで飲むのである)、いつ帰れるかもわからないママさんを、じっと待つというのは、すごい。なにがすごいかって、その体力、耐力の持ち量であり、そして、わからない、なにがわからないかって、それは想いの強さなのか、ただの執着執念なのかが、わからないのである。

 

 

昨日はわりと早めに帰って、といっても終電前くらいだったと思うけれど、ひまだったからかママさんがずっと隣に座って喋っていた。私は「だれか特定のひとがすき」で来ているひとには、なるべくスルーするようにしている。私はその人の代わりにはならないし、なれないし、なりたくないからだ。WTKSさんはママさんが1番なんだろう。私はママさんのように振る舞おうとは思わないし、WTKSさんもべつにそれを望んでいない。ママさんがママさんであればいいんだと思う。私はそこへ介入しないし、WTKSさんも介入してほしくなさそうだから、付かず離れずの距離で、眺めているのがいい。誰かにとっての1番があるというのは、悪いことではないけれど、他の人にたいして壁を作る。きっとそう思うのは、そのひとにとっての1番が私じゃないからなんだろう。だから、客観的になれるから、そのひとの1番がよくみえる。1番は、1番であるために、1番である努力をし続けることが大事なんだなと思うし、2番目はどうがんばっても2番目で、3番目は3番目、4番目は4番目で、そこらへんの異動はあるんだろうけれど、でも1番以外はみんな一緒なんだと思う。

昨日のお客さん、その12

昨日は12月始まって最初の月曜日、ということで、混むかな混むかなとワクワクしていたのだけれど、結果はまあ、忙しくもなければそんなに暇でもなかったな、という感じでした。まあまあなスタートといったような。

 

 

F木さんが4名で来店された。F木さんは誕生日で、さぞや盛大にお祝いするのかと思いきやそんな素振りは見せず、いつもより少しはしゃいでいたくらい、あと珍しく、というか初めて、私はF木さんが歌を歌っているのをみた。いつも通りにこにことしているF木さんと、一緒に来た男の人たちはみんな楽しそうだった。

 

体験、と称してリエさんが入った。先週もきた女の子だった。その時はお店の様子を見に来るというていでお客さん側に座って飲んでいたけれど、昨日は衣装を着て、といってもワンピースだけれど、店側に立ってお酒を作って飲んでいた。浅草で美容師をしているという彼女は青森県出身だという。お客さんは先週リエさんと仲良くなったTSさんが4人できて、カウンターに座った。隣で洗い物などしていた私は、リエさんがタメ口でお客さんと喋っていることに違和感を覚える。友達のノリで話すしゃべり方に、私は少しばかりいらいらしてしまいながらも何も言わない。これがこの子のスタンスだとわかりながら、なんだかとてもばかっぽく思える。一度目につくと、カウンターに肘を乗せてもたれかかるようにする姿勢とか、ひたすら動かして落ち着かない膝の動かし方とか、ひとつひとつがこのお店の敷居を下げているように感じてしまって、気分が悪くなる。でも何も言わない。私は自分が見たくないものに関わりたくないからだ。私は綺麗なものをみていたい。格式とか礼儀とか、そういうのも大事だけど、だからといってガチガチにしろなんて思っていないしむしろユルくていいと思う。だけど、こういうのはべつだ。違う、と思う。こんな友達みたいな軽いノリに、礼儀も尊敬もありゃしない姿勢に、私は腹を立て始めていた。

 

 

2ヶ月弱ぶりに、HRTさんがいらっしゃる。この人は前回、私が始めてお会いした時にワインを一本入れてくださった方だから、印象に強い。一緒にボックス席に座って、お客さんが来るまでママさんとみかさん、HRTさんと一緒にきた人とみんなで飲んだ。あの時のお礼がしたかったのだけれど、タイミングが合わず、最後に挨拶がすこしできたくらいで、「今度また飲もうね」という言葉をいただいた。嬉しい。

 

 

3ヶ月以上ぶりに、WMTOさんがきた。WMTOさんは夏頃までしょっちゅうきていたのだけれど、その時ご贔屓にしていたあいさんという可愛い女の子がやめてしまったのでめっきり来なくなっていた人だった。「あいさんやめてから来ないなんて、わかりやすいわねえ」と喋っていたくらいで、本人は来店して早々、「いやあ、あいちゃんやめてから来なくなるなんて、わかりやすいよなあ、俺」と自分で言っていて、素直な人だなあと感心した。WMTOさんに、この前新しく入ったせいらさんがついて、WMTOさんはにこにこしていた。あいさんのことをすごく好きだったWMTOさん、いい人なんだから、これからもめげずにいろんな可愛い女の子と出会ったらいいな、と思う。

 

 

0時半くらいに終わったのだけれど、ママさんがワインでも飲みなよと言ってくれたので、2人で座ってワインを飲みながら恋バナや女子トークをした。2時半過ぎに、タクシーに乗った。

妄想デート論、ドライブ編

デートをしよう。デートに行こう。今みたいなこんな曇り空でも、無理してはしゃがないで自然のまま、落ち着きながらもわくわくドキドキできるような、そんな恋ができる相手とデートをしたいと思う。

 

 

起床は11時。ちょっと遅め。LINEでやり取りをする。今日なんかしない?なにする?どこ行く?から、まず始まる。なに食べたい?ううん、カレー食べたくない?いいねえ、ジャパンカリー?インドカリー?んんん、ナンが食べたいから、インドで!了解。あと、ドライブがしたい。街を回りたい。音楽きいて、徘徊しよう。夜にかけて、いろんなところを見よう。ネオンを目に留めよう。車、カーシェアで予約する。16時からなら空いてるよ。オッケー!6時間パックでちょうどいいよね。

 

そしてお昼すぎに中目黒で会う。もはや夕方。池尻大橋のほうに歩いていって、ナンが食べられそうなカレー屋さんに入る。チキンとマトンとほうれん草で悩む私。チキンカレーにして、特大のナンを待つ。天気はよくないけれど、よくないときでも食べたい気分にさせるのがカレーだ。そしてまた、どこ行くなにする、が始まる。したいことなんかないのに、何かこの人としたい。楽しいこと、嬉しいこと、共有して、2人でニヤニヤしたいと思う。なんだろう、ナンだけにね、なんができるだろう。なんしよう。16時すぎに食べ終わって、カーシェアへ。いえーい、久々の助手席。って運転しないんかい、私。「ナビは任せて」なんて大見得切ったけど、地図なんか読めない。でもそんなの承知の助だから、よっしゃー行くぞーなんて言って当たり前のようにハンドルを握るこの人は、自分で流す音楽を入れる。んだけど、ファースト・ソングは私に任せてくれたので、マギー・ロジャースの「ライトオン」を選択。風を感じたくなる曲。ちょっとセンチメタルな気分になりがち。中目黒から、自由が丘へ行く。あそこ、道狭いから嫌なんだよなあ、と2人で文句を言いながら、それでも行く。小腹がすいたので、紅茶が飲みたいという。スタバでイングリッシュブレックファーストティーラテを飲む。夕飯、家で作るという彼と自由が丘駅前のスーパーに行く、ガパオを作りたいらしい。あれやこれや材料を買って、車に乗り込む。少しだけ、自由が丘を散策する。踏切を渡ったところにベイクがあるので2人で並んで食べる。風がぴゅうっと吹いて、寒い。渋谷まで車を飛ばす。バーに行きたい、けど車だからなあ、と言いながら、お酒を飲まない約束でバーに入る。まだ夜は始まったばかりだから、人もまばらで、私たちはソフトドリンクを頼む。ノンアルコールで、どこまで酔えるだろう。もう恋自体が酔いみたいなもんなんだろうけどさ。それでも私たちは、コカ・コーラジンジャーエールで、いろんなところに目をつけてはくだらない会話を最大限に引き伸ばして、にやにや笑ったり爆笑したりして楽しんだ。ナッツをつまみながら、2杯目のグラスが空になりかけたところで、お店を出る。今度は酔っ払いにこようね、と、渋谷を出て、車に乗り込むんだ。

妄想デート論、江ノ島編

デートへ行こう、デートをしよう。一緒にいて落ち着く人、わくわくする人と、いいお天気の日に、お昼前から、素敵なデートをしよう。

 

まず、朝の9時に起床して、ぼんやりしながらどきどきと着ていく服を決める。まあ前々から決めてはいたんだけど、それでもこっちの方がいいかな、なんて右往左往したりする。朝ごはんをしっかり入念に、丹念に食べて、落ち着かせる。落ち着かせたら、化粧をする。こちらもまた入念に丹念に洗顔して、入念に丹念にクリームをぬる。いつもより丁寧にぬる。手のひらで保湿もする。にっこり笑ってみせる。パウダーはたいて、眉とアイシャドウ塗る。歯を磨いて、スマホをチェックしながら支度する。持ち物はお金と定期とパウダーとリップとチークとアイシャドウ。荷物はできるだけ軽く。髪もセットして、結んだほうがいいか結ばないほうがいいか、親に聞いてみる。靴を履いて、全身鏡で確認、オーケイいざ出発。

 

 

待ち合わせはローソンで、おにぎりをふたつ買って、なんてことはしないけれど、東京駅で落ち合う。乗る電車は、東海道線。小田原行き。もしくは熱海行き。品川くらいまではちょっと混みつつ、横浜を越したらがらっと空いて、2人で座席に座る。陽が当たってぽかぽか気持ちいい。グリーンの景色が横切る。乗り換えて、電車を待つ。ぽかぽか日向をみながら、日陰でよりそう。お昼すぎ頃、江ノ島につく。着いたらもうお腹が空いているので、すぐお昼ご飯にする。しらす丼が食べたいという。ほどよく空いている食堂に入って、2人して向き合って、魚でいちばん好きなのって、なに?って聞いたりする。お刺身だったら、ウニとかいくらかな。煮付けだったら、うーんキンキとか?のどぐろって食べたことある?そういえばサカナくん生でみたことあるよ。なんて喋ってるうちに、しらす丼が運ばれてくる。

 

 

食べ終わって満足したら、アイスが食べたくなってくる。ぷらぷらと街のなかを歩いて、抹茶かなんかのアイスクリームを食べる。コーン派か?カップ派か?私はカップにして、食べながら歩く。神社に行って、階段をのぼる。お参りをして、景色を撮る。ここでツーショットを撮れるかが問題である。撮れなくても、彼の写真を数枚とって満足しちゃうんだろうけど。ゆっくり階段を降りて、一休みする。なにかお願いしたの?って聞いて、教えてもらったら、私は言わないよ、言ったら叶わなくなりそうだから、へへーん、なんて言って笑う。またぶらぶらして街を歩きにいく。お腹減ったねとか言いながら、夕方前の江ノ島のあの商店街みたいな通りを眺める。

 

 

ハンバーガーが食べたいな、と言う。駅前のクアアイナに行って、テラスっぽい席に座って食べる。もりもりフレンチポテトフライを食べるか食べないかで悩みつつ、ハンバーガーなんて大口開けるじゃん、と食べ始めてから気づく。ナイフとフォークを使うか?と考えてたら、彼はいただきまーすといとも簡単に口を開いてかぶりつくから、よかった、と思うと同時に、私もちまちまと下のバンズとハンバーグ、上のバンズとハンバーグ、というふうに、分けて食べたりする。ソースを垂らさないように、時々崩したりする。

 

 

お酒が飲みたくなってくる。バーに行きたい。江ノ島にはなさそうなので、早めに電車に乗って、新橋か品川へ行くことにする。電車は軽く混んでいて、2人でドアにもたれかかりながら景色をみる。楽しかったね、しらす丼と、アイスと、ハンバーガー。食べ物の話は尽きない。ちょっとうとうと眠くなってきたと思ったら、ちょうどよく席が空いたので、並んで座る。ピンクと紫の空が綺麗。品川に着いて、降りてみる。バーなんかないねえ、と言っていると、ハブがあった。私はワインを、彼はハイボールを飲む。ほどよく酔ったところで、改札前で別れる。楽しかった、またね、と人混みに紛れてキスをする。一瞬だけぎゅっとする。照れ臭くなって、私は背中を見せるのが嫌で、相手を見送ることにするんだ。

昨日のお客さん、その11

週末である金曜日は思ったより暇で、気合い入れ込んでた私は拍子抜けしてしまった。連休前の予約が1組だけって、どういうこと?

 

 

K村さんが7名連れてきて、合計8名。でもそれも21時過ぎにきて、それからずっとお客さん来なくて、私はひまというひまを持て余しひとりバーカウンターの中でぼんやりしているのをごまかしつつ、洗面台をかる〜く掃除しつつ、それでもやっぱりぼうっとしていた。あまりにも暇で、私が考えることは明日のこと、つまりいまでいえば今日のこと、を、どう過ごすか、そしてクリスマスをどう過ごすか、そんな20代の大学生にありがちなことを考えていた。

 

 

T崎さんが新橋にいるという電話をママさんが受けた。十数分後にきたT崎さんに会うのは久しぶり。3週間ぶりである。痛風が、と言っていたT崎さんは、小豆の甘納豆を元気に食べていて、焼酎も水割りで飲んでいたし、まだまだ現役なんだと感じる。健康診断があるという日でも、前日の23時まで飲んでいたというT崎さんは、「ふつうだったら2〜3日前には控えたりしますよね」という言葉にも、「そらあんた、控えたら数値が下がるのは当たり前なんだ、いつも通りの状態で受けなきゃ意味がないんだ」とトーゼンのように言っていて、高校生の実力テストみたいだと思った。実力なんだからテスト勉強しちゃ意味がない、と嘯いていた高校時代の私である。

 

 

そのあとはM森さんが久々にSンさんを連れてやってきた。もうこの頃には笑顔が作れなくなっている私。身体がだるくて重い。ダメだ、うまく動けない。笑顔が作れない。帰りたい。明日、つまり今日の朝早くから、美容院の予約をしてしまっていた私。帰りたい。ああ、MKさんがひょっこり来店したりしないかなあ、そうしたらめちゃくちゃテンション上がって、頑張れるんだけれどなあ、なんて思ったり。

 

 

でもそんな期待は破られ、23時が過ぎる。23時半前に、Y口(美)様がいらっしゃる。こちらもすごく久しぶりで、この方は仙台に馬を飼っているお方。最初聞いたときはなにかのギャグかと思ったけど、話を聞いたらほんとにほんとの馬を飼っていて、写真もバッチリ拝見させていただいた。真っ白な、人間でいうと美人なホースなんである。見た目もお金持ちかと思いきや、きちんと中身までお金持ちであったのだから、驚くを通り越してもはやすんなりと納得してしまう。馬はちゃんと人間と感情の意思疎通をしているようで、「馬もね、嫉妬とかするんだよ。僕が他のところで別の馬に乗ってたりすると、仙台に戻ったとき、彼女はね、わかるわけだよ。匂いとかでね、わかるんだろうね、嫉妬するんだ」とおっしゃっていて、ほえ____、人間も動物だからその動物も嫉妬するとなればそりゃそうなんだと理解できるけど、でもやっぱり嫉妬するといった、どうしても人間の、人間だけが持つ感情と思いがちなその感情は、馬に限らずありとあらゆる動物にあるんだなあ、と、今更ながら感心してしまった。なるほどね、そうだよね。自分を可愛がってくれている人が、他の、自分と同じような種類のものを可愛がったら、面白くないと思うのは世の常というか、人間だけに限らないことなんだなあ、と動物にしみじみと思いを馳せてみたりなどした。

昨日のお客さん、その10

昨日はめちゃくちゃ忙しくて、TTYさんがお店をオープンしたというのでその取引先であるお酒の会社3社の人たちを連れて7名になり、R子様が大ママオーナーと田中屋でお蕎麦を食べてからいらっしゃったり、約2ヶ月ぶりくらいのJ会社のHRさんがきたり、みかさんのお客さんKMT先生がきたりと、「笑顔!笑顔!なにはともあれ一にも二にも笑顔に笑顔‼︎」と常に意識していなければ真顔になってしまうほど、私の口角は上向きに整備していた。

 

 

SP会社とST会社とHT会社という、大手お酒のメーカーの人たちを連れてきたTTYさんは、とある居酒屋の会社のお偉いさんである。いつもは、SP会社の人たちだけ、もしくはST会社の人たちだけ、HT会社の人たちだけと、会社ごとにだいたい決まった人を連れてくるのだけれど、昨日はその3会社を同時に連れてくるというから、もう私はくる前からどきどきというかわくわくというか、それに少々の不安と困惑が入り交じった思いでいた。だって、だって、SP会社のお酒も、ST会社のお酒も、HT会社のお酒も、どれをどのタイミングで誰が飲むのか、気になって気になって仕方ないんですもの‼︎

まずは、乾杯のお酒。ビール会社で有名なSP会社とST会社の人たちは、この流れをどうするか?はたまた親分であるTTYさんはどうお酒を振っていくのか?と半分ヒヤヒヤ、半分わくわくしながら見守っていると、「とりあえず、ビールで」。きました、とりあえずのビール。しかし、今うちにはSP会社のビールしかない。他社のビールは飲まないといわれているのを聞いたことがあるので、これをST会社さんたちはどうするのか…?と案じていたが、問題なく、SP会社のお酒で乾杯していて、だけどそのあとの自分のお酒は自分の会社のものをお茶やソーダで割って飲んでいた。もしかしたら他社のお酒など気にしないで飲んでいた人もいたかもしれない。3社ものお酒メーカーが揃ってお酒を飲むことになると、作る方は大変だろうなと思った。それとも私が考えすぎなんだろうか?

 

 

J会社のHRさんは出張が多く、アジアやアメリカを中心に行き来していて、最近ではサンディエゴに行っていたらしい。いいなあと言うと、「そういうところへ行くというとね、大概いいねとか言われるんだけども、仕事だからね、仕事済んだらさっさと帰ってこいってなるんだよ、0泊2日とかで帰ってくることもあるしね。ロスまで行くと深夜便が動いているからというんだ。深夜便だよ。飛ばさないでくれよって思うよ。それでこっちにつくのは朝の5時くらいでさ。会社行けちゃうじゃん、みたいな。で、たまに到着時間が早まってラッキーみたいなのも聞くけど、全然ラッキーじゃないよ、朝の4時半に空港なんてさ」と言っていた。

 

 

私は22時過ぎごろからTTYさんにワイン飲みなよと声をかけてもらったのでミニボトルを持っていき、ST会社の人の隣に座らせてもらった。いつも私に飲みなよと気にかけてくださるTTYさんと、とうとうグラスを交わすときがきたのだ。私は嬉しさと緊張で体が火照り、焦りながらもにこにことしているしかなかった。ST会社のYMKKさんとおしゃべりをし、ワインのソムリエの資格を持っているというその人の話を聞く。

「女性って、男性よりすごく優秀だと思うよ」とおっしゃっていて、このくらいの年代の人(40〜50代くらい)が言うには珍しい、とても貴重な意見を聞いた。仕事に対して、男は女より優っていると言う概念が強いであろうという私の偏見を、覆したひとで、私は驚く。「本当にそう思うよ。男はアホだけど、女の人は感性が男とは違う。仕事でも営業で女の人がいるけど、すごいよ」と言っていた。そう言える40代、50代の男の人ってなかなかいないと思う。16時から飲んでいる(仕事で)彼らは、23時半になってもまだ飲み続けているのに、意識はしっかりしていて、そこもすごいなと感心指定sまった。体力、気力、ともにそうそう並のものでは生きていけないと思う。私は彼らにとても興味を持った。

昨日のお客さん、その9

昨日はサンフランシスコからのお客様、R子様がいらっしゃるところから、私の心意気はいつもとちょっと違ったのである。

 

R子様はサンフランシスコに飲食店を持っていて、私と大ママオーナーは一度サンフランシスコへ行った時、大変お世話になった。もちろんR子様のお店にも行き、美味しい数々の料理に腹をふくらませたり、日中は自家用車で市内を観光しに回った。私が大学1年の夏だった。

 

 

私は大ママオーナーの下で働かせてもらうことになってから、R子様に時々会う。足の手術をしに日本へ帰ってリハビリをしていた彼女は、1ヶ月おきくらいにお店にくるのだけれど、リハビリが終わった夏からサンフランシスコへ帰還、また最近になって日本に戻ってきたというので近々お会いできると聞いていたのです。それが、昨日。大ママオーナーの友人であるY口様が誕生日当日であるというのでご飯を食べてきたらしく、お寿司屋さんのお土産として太巻きをいただいた。誰にも分けず1人で食べた。8種類もの具がはいった美味しい太巻きにうっとりした本日である。

 

 

R子様はテキーラで有名な方で、その場にいたひと、店員もお客さんも関係なくテキーラを飲ませる。彼女のテキーラの飲み方はあっぱれ、ショットグラスに並々ついだテキーラにレモンを絞りに絞って、乾杯とともに一気にクイーッと飲み干す。人への勧め方もこれまたお見事で、「あらあなた、ちょっといらっしゃいな、一杯だけ、一杯だけ、こちらのこのお酒で乾杯してくださる?どうかしら?一杯どうでしょうか?はい、これね、持ってね、うふふ」と、にこにことお上品にショットを掲げてくるものだから、相手は戸惑いながらもそのペースに巻き込まれ、巻き込まれたと気づいたときには時すでにお寿司いや遅し、まんまとテキーラのループにはまっていくのである。ショットが終わると今度はロックグラスに氷、テキーラで水割りを作り、レモンを絞ってコップのふちにまんべんなくこすりつけて、入れる。R子様テキーラドリンクの仕上がりである。これを、自分用に自分で作り、そして相手のためにも作る。

 

 

R子様のオソロシイところは、誰がどのくらい飲んだかきちんと見ている、というところだ。その場にいて、テキーラドリンクを振舞われた者は、半分以上手付かずでいるが、そうしているとたとえおしゃべりの途中でも、「あらあなた、全然飲まれてないんじゃありませんこと?美味しくなかったかしら、あたしの作ったお酒は。あらそう?おいしい?よかったわ、どんどん飲んでね」と、水で薄まったドリンクへテキーラをドバドバ追加、レモンもきれいに入れてくれるものだから、もはや逃げ場がないのである。飲むことが、もはや逃げ場なのである。飲めば飲むほどR子様は喜び、作り、飲まなければ飲まないほど、酔えない状態でそこにいることができなく、R子様の手練手管で飲み干すこととなり、そしてまた新たに注がれることになるのだ。

 

 

そんなこんなだから、私はR子様がいらっしゃるときくと、これはちといつもより、気合いというべきか、心意気というべきか、覚悟というべきか、そのような心持ちを待たずして、数日前から体調を備えるのであった。

 

 

21時半頃来店したR子様とY口様はごきげんで、ボックスに突然の来店者がいたためにカウンターへ移動、憎まれ口をたたきあいながらも仲良くやりとりをしていて、Y口様のバースデー祝いということで、R子様とY口様、私とみかさんでテキーラショットをあおった。口の中がビリビリする感触がひさしぶりで、すばやくレモンを口に含む。ショットグラス並々のテキーラは口の中でじわじわと電流を流し、今日の体力の行く末を案じた。どうか安全で健全で心安らかに終われますように。